平成12年度未踏ソフトウェア創造事業
採択案件評価書
| 1.担当PM | 11.村井 純 |
| 2.採択者氏名 | 三屋 光史朗 (慶應義塾大学村井研究室) |
| 3.プロジェクト実施管理組織 | 株式会社創夢 |
| 4.委託金支払額 | 29,999,970円 |
| 5.テーマ名 |
「次世代グローバル通信 支援システムの構築 〜End to Endインターネット移動体電話システム〜」 |
| 6.関連Webサイトへのリンク | http://www.sfc.wide.ad.jp/ http://www.v6.sfc.wide.ad.jp/~mitsuya/ |
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7.テーマ概要 本提案では、IPv6を基盤とする次世代インターネット上で、移動体を含む全てのデバイスによるグローバルな通信を実現するための基盤ソフトウェアを開発する。またそのアーキテクチャの実用性検証のための、大規模ネットワークエミュレーションを行うテストベッドを開発し、さらに基盤ソフトウェアの有効性を実証するために、その基盤ソフトウェアを利用して、End to End の移動体電話システムを開発する。 従来の通信環境では、非移動体と移動体の通信を行う方法として、それぞれの通信デバイス間に中間ゲートウェイを置くケースが多いが、本提案では、グローバルコミュニケーションの基本である End toEnd 通信を実現することを主眼にしており、その上で革新的なアプリケーションを創造することのできる、ソフトウェア基盤を構築することを目的としている。その 実現のための要素技術として、Mobile IPv6、インタフェース切替等の技術を開発する。 |
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8.採択理由 2010年のインターネット像の一つとして、世界中のあらゆるデバイスがインターネットに接続し、モバイルノードとなる、ということがあげられる。全世界に分散するエンティティに対してIPアドレスを割り当て、さらにそれが移動するということを前提にしたソフトウェア開発基盤は現在まだ構築されていない。従来の I-mode サービスなどに代表される携帯電話でのインターネットサービスは、中間ゲートウェイシステムを介したもので、本来のEnd-to-End システムとしては機能していないため、自由なサービスの開発を部分的に妨げている結果となっている。そういう意味で本提案は、自由なグローバルサービスを地球全体の規模で展開していくであろう2010年のインターネットを支えるに不可欠な基盤であると判断した。 本提案の代表者は私の研究室の学生であるが、提案内容は大変重要なインターネット基盤技術であり、十分実現能力があると認められるため採用にいたった。 |
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9.プロジェクトの成果 (1)開発ソフトウェア 下記モジュールの開発を完成し、統合的に目的を遂行するためのソフトウェアが完成した。 ・Mobile IPv6モジュール(Mobile Node、Home Agent) ・インタフェース切り替えモジュール ・インターネット移動体電話(VoIPアプリケーション) ・偏在ノードエミュレータ (2)成果実績 本ソフトウェアうち、Mobile IPv6は、IETF(Internet Engineering Task Force)で標準化が進められている技術であるが、本プロジェクトで開発したモジュールは、世界でも高水準のサンプル実装として標準化活動に大きく貢献した。 また、開発したインターネット移動体電話ソフトウェアは、ジッタのコントロールを行なうことによって、現在期待され一部実用化が開始されたインターネット電話以上の品質を提供することができた。 (3)研究論文 開発の成果として、以下の論文が発表された。 湧川 隆次「MobileIPv6を用いた複数インタフェース通信機構の設計と実装」、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科2000年度修士論文 |
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10.評価 契約締結後より順調に開発を進め2月末には開発が終了した。 2001年2月21日、開発成果のデモを慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスにおいて実施した。デモの概要は下記の通り。 デモ構成: デモに利用したネットワーク環境を図1に示す。
・ 図1のtel1 とtel2には本プロジェクトで開発した、Mobile IPv6 のプロトコルスタックと、電話アプリケーションが搭載されている。SFC HA にも、本プロジェクトで開発した、Mobile IPv6 のHome Agent モジュールが搭載されている。 ・ まず、図1のtel1 と tel2の間で、電話アプリケーションを利用して、音声コミュニケーションを取る(図2)。 ・ 次に、tel2は、別のサブネットに移動するが、HAが移動後のIPアドレスをtel1に通知することにより、透過的に通信を維持できることを実証した。また、その際に、実行中の電話アプリケーションは、数秒の途切れはあるものの、ほぼ透過的に、音声コミュニケーションを実現することができた(図3)。 ・ デモでは、接続するサブネットが変化し、実際のIPアドレスが変わるタイミングがわかりやすいように、画面のバックグラウンドが変化した。
まとめ: 本デモ結果と、既に述べた成果、および開発チームより報告された成果報告書による総合的な評価として、本プロジェクトが目的としたソフトウェアが開発され、かつ十分実用に耐えうる品質であり、また、インターネット技術の標準化に大きく貢献したことを高く評価する。 |
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11.本開発テーマの今後の展開の可能性 本ソフトウェア開発の成果により、Mobile IPv6の有用性を証明した。またその上で動作する、移動体電話アプリケーションが実用段階であることも証明した。このことにより、本プロジェクトが目的としたグローバルで地球規模の移動体同士によるEnd-to-Endコミュニケーションの実現性が証明されたといえる。今後は、MobileIPv6の標準化へ貢献を続ける共に、本プロジェクトで開発したソフトウェアを利用した製品開発への応用、高速に移動する移動体のための技術開発などへの展開が期待される。 |
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