平成12年度未踏ソフトウェア創造事業
公募プロジェクトに関する調査報告書
プロジェクトマネージャー 松島 克守
1.総括
当プロジェクトは、既成の枠組みにとらわれない新たな技術の創造を促す画期的な試みである。しかし、その一方で、個人の技術的着想にのみ着目し、その具現化の保証が希薄であるというリスクを伴う。しかし、当「未踏ソフトウェア創造事業」においては、前者の可能性と社会的価値を優先し実行に移した。その真価は、今後問われることになろうが、米国に比べ、個人の着想や技術をビジネスへと誘う社会的制度やコンセンサスが未成熟な我が国にとって、今回の試みは、公的な機関がなしうる新しい産業育成の手段として高く評価されるべきである。
さて、当事業の初めての成果は、その期待を裏切らないものとなったと評価している。すなわち、新たなビジネスの創出を予見させる成果が報告されている。
各プロジェクトの提案は、企業的合理性から考えれば、短期的には事業化に結びつきにくく、また新しい技術であるがゆえに、その真価を十分に生かしうる事業モデルを見出しにくいという難しさを持っている。しかし、今回の成果は、そのギャップを埋めるものとなるだろう。
個々のプロジェクトについて詳細な評価は別項にて述べるが、評価の前提となる採用の基準を確認にしておきたい。すなわち、
@極めて斬新であるとともに、現状と市場ニーズの乖離の中で開発目標が明確に同定されている。
A基礎技術の蓄積があり実用化プロジェクトを起こすべき段階にある。
B提案の新規性、独創性が提案者の本プロジェクトに関連する学術論文で公的に評価されている。(学術論文とは学会に発表され公開議論を経てさらに学会の選定した専門家の査読・校閲を経て新規性・独創性・有効性を確認されたものを言う)
C上記により当開発物が本人の知的資産になりうることを確認できる。
D開発に必要な知的な開発組織・人材が準備されている。
上記のとおり、採用にあたってはその斬新な着想に着目するも、全くの夢物語では、「ビジネス化の可能性」がなくなってしまう。その折り合いをどこでつけるべきか、大いに悩むところではあった。
結果をみれば、どちらかというと「ビジネス実現可能性重視」での採用とはなったが、昨今巷にあふれる単なるアイデアのみによる脆弱な事業基盤ではなく、容易に真似のできないしっかりとした技術的基盤に支えられた事業を創出するべきとの観点からの採用は、本事業の趣旨にも沿うものと考えている。
さて、当職採用の7案件に関して、上記のとおり期待した成果が実現しているかというと、以下のような結果となっている。
◎開発成果を事業化する受け皿会社が決定した 3件
・高速配車配送計画作成支援システム
・3次元多様体モデルによる高品質汎用6面体メッシュ生成システム
・世界初のSTEP等データ交換の無誤差化自動システムの開発
◎基本的技術、開発者の意欲はあるが、事業化には更なる開発が必要 3件
・研究情報システムの構築のための知的資源の独自分類と検索システムの開発
・未踏テキスト情報中のキーワードの自動抽出システム
・ユーザ支援のための携帯型対話エージェントの開発
◎事業化の可能性は高いが、開発者が事業化に慎重 1件
・未知のノードを含むネットワーク分散協調演算処理システム
また、上記7件中6件は、特許取得に向けて、具体的な手続きをすする意向である。
限られた期間でのプロジェクトであり、その成果をこの時点で判断するのは、時期尚早と言わざるを得ないが、上記採用趣旨にかなう成果は達成しているものと判断している。
2.個別プロジェクトについての報告
これについては、プロジェクト毎に項を参照されたい。
(以上)